2020年8月13日木曜日

ハリス氏「ガラスの天井」破れるか…3人目の女性副大統領候補に


渡部恒雄氏渡部恒雄氏米民主党の副大統領候補の人選について、日米の政治・外交に詳しい笹川平和財団の渡部恒雄・上席研究員に聞いた。
米上院委員会の公聴会で発言するハリス氏(6月25日、ロイター)
米上院委員会の公聴会で発言するハリス氏(6月25日、ロイター)

 【ワシントン=蒔田一彦】11月の米大統領選に向け、民主党のジョー・バイデン氏(77)の副大統領候補に選ばれたカマラ・ハリス上院議員(55)は、バイデン氏勝利なら米国史上初の女性副大統領となる。世界で次々と女性リーダーが誕生する中、米国では苦難の足踏みが続いている。 2008年の大統領選で共和党の副大統領候補だったサラ・ペイリン元アラスカ州知事は11日、ネット上の投稿でハリス氏を祝福し、「あなたの前を歩んだ女性たちのことを忘れないで」とエールを送った。

 当時保守派の期待の星とみられていたペイリン氏は、オバマ前大統領と本選を争ったジョン・マケイン氏の副大統領候補に選ばれ、一時は人気を集めて「ペイリン旋風」とも呼ばれた。

 米国の主要政党で最初に副大統領候補となった女性は、民主党のジェラルディン・フェラーロ元下院議員だ。1984年の大統領選で、ウォルター・モンデール元副大統領と共に、共和党からの政権奪還に挑んだが、大敗した。

 ハリス氏は、この2人に続く米主要政党3人目の女性副大統領候補となる。

 閣僚を含め、女性が米政府の要職に就くのはもはや珍しくないが、正副大統領の壁だけは破られていない。有権者が大統領職に対して抱くイメージが大きく影響しているとされる。

 16年の前回大統領選では、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官が女性初の大統領を目指した。米国には女性のトップ就任を阻む目に見えない障壁があるとし、これを「ガラスの天井」と呼んで立ち向かったが、本選でトランプ大統領に敗れた。敗戦後、「天井を打ち破ることはできなかった」と悔しさをにじませた。

 しかし、ハリス氏が副大統領に就任すれば、女性初の大統領誕生も大きく実現に近づくとの見方がある。高齢のバイデン氏は自らを「移行期の候補」と呼び、当選しても1期限りで退任する意向を示唆している。その場合、ハリス氏が有力な後継者候補に浮上することは間違いない。

アジア系黒人女性、幅広い支持期待…渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員

 バイデン氏は女性を選ぶと公言してきた。ハリス氏は女性であると同時にアジア系の黒人女性でもあるので、さらに幅広いマイノリティーの支持を期待できる。州の司法長官や上院議員といった豊富な経験があり、即戦力でもある。

 バイデン氏が高齢であることから、不測の事態に対応するための資質も求められた。4年後の大統領選における最有力候補を選ぶことにもつながり、共和党のライバルと戦うための強い候補であることも重要だった。ハリス氏は実際に予備選でバイデン氏を含む各候補と堂々と渡り合った。

 予備選で厳しい追及を受けた相手を副大統領候補に据えることで、バイデン氏自身の器の大きさを示すことができると同時に、耳に痛いことを言う人物を遠ざけてきたトランプ大統領への痛烈な皮肉にもなる。

 ハリス氏は中道派なので、左派に苦手意識を持つ企業経営者らをつなぎとめることもできる。トランプ氏から見ると、左派を標的にする従来の手法を採りづらい嫌な相手だろう。(聞き手・国際部 森井雄一)

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