2020年7月17日金曜日

最年少タイトル将棋の新時代を告げる快挙だ


 将棋の藤井聡太七段が17歳11か月で棋聖位を奪取し、タイトル獲得の最年少記録を更新した。新時代の到来を印象づける快挙である。
 当代屈指の強豪、渡辺明三冠を3勝1敗で下した。
 史上最年少の14歳2か月でプロ入りし、そのまま歴代最多の29連勝を果たすなど、これまでも幾多の記録で注目を集めてきた。
 新型コロナウイルスの影響を受け、一時はタイトル挑戦の新記録が危ぶまれた。棋聖戦五番勝負の出場者を決めるトーナメントで4強に進出したものの、感染防止策で2か月近く対局が組まれず、待機を余儀なくされたからだ。
 再開後、厳しい日程を勝ち抜き、初タイトルを手にした。伸びやかに才能を発揮した姿は同世代の若者はもとより、多くの人を元気づけよう。拍手を送りたい。
 並行して、二冠の懸かる王位戦七番勝負に挑んでいる。相手は最年長の初タイトルで話題を呼んだ木村一基王位だ。竜王戦でも決勝トーナメントに入っている。一気に勢力図を塗り替えるか、目の離せない局面と言える。
 藤井七段はデジタル技術と共存する現代将棋を象徴している。
 正確無比の読みは、伝統的な詰将棋で培ったとされる。将棋ソフトを棋譜研究に併用し、ベテランの予想を超える妙手を放つ。対局後のコメントは礼儀正しく、初々しい素顔が好感を抱かせる。
 デビューした当時、すでに将棋ソフトの棋力は人間をりょうしていた。頭脳ゲームとしての将棋の先行きが懸念されたが、今では逆に人気が高まっている。個性的な棋士たちが知力を尽くす面白さが際立ってきたからではないか。
 観戦のみを楽しむ層が増えてきたのは、その証左だろう。公式戦での「将棋メシ」や着物がネット中継やSNSで話題を呼ぶようになっている。
 平成時代の将棋を牽引けんいんしてきた「永世七冠」の羽生善治九段もなお第一線に立つ。西山朋佳女流三冠は女性初の棋士資格に向け、奮闘している。八大タイトルは藤井七段が一角を占め、合計5人で分かち合う群雄割拠の状況だ。
 見所は尽きず、日本将棋連盟としては、将棋人口を増やす絶好の機会を迎えている。
 悩ましいのは、新型コロナの流行が収束しないことだ。アマチュア大会やプロ棋戦の解説会は開催中止が相次いでいる。対局者らの安全を確保しつつ、オンラインでのファンとの対話など、新たな手筋の開拓が求められる。

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