全国的に感染者数が増加しつつある状況にあっても、子どもや孫の顔見たさに帰省してほしいと強く願う祖父母がいる一方で、田舎に県外者を招くことに抵抗を持つ人も少なくない。立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也さんがいう。
「特に感染者が少ない地域だと、都市圏からの来訪者に厳しい目を向けがちなのでしょう」
まだ感染者ゼロの段階の時、岩手県出身の青年が父親と交わしたやりとりもネット上で話題になった。6月19日に県をまたぐ移動の自粛が解除されたのを受けて「そろそろ帰省していいか」と青年が父に尋ねたところ、「絶対に帰るな。岩手1号はニュースだけではすまない」という返事が送られてきたというのだ。
同様に、都会に住む若者の帰省を断固として拒否する例は後を絶たない。
「独立して東京に住んでいる息子たちが『兵庫のおばあちゃんに会いたい』と言うので、子供だけ帰省させることを提案したところ、『私を殺す気か!』と義母に激怒されました」(大阪府・50代の主婦)
かと思えば、帰省する息子たちを迎え入れながらも、近所に対して後ろめたさを感じている人も多いようだ。
「近所のかたが、『東京から息子夫婦が帰省してきます。こんな時期なのに申し訳ありません』と菓子折を持ってきたんです。私なら、義父母がそんなに後ろめたい思いをしているなら、喜んで帰省をパスしますけどね」(富山県・30代の主婦)
帰省がなければ、気楽な上に交通費も節約できる。だが、義実家との関係を円満に保つには、周到な準備が必要だ。マナーコンサルタントのマナーズ博子さんが話す。
「まずは電話で『コロナの問題で万が一、お義母さまたちにご迷惑をおかけしてはいけないので、今回は控えさせていただこうと思うのですが』と伝えましょう。帰省しないと決めていても、『ご相談なんですが…』という姿勢で話すのがポイントです。もし、『来なさいよ』と言われたら、『職場や子供の学校から、遠出は控えるように言われていて。申し訳ありません』と伝えましょう」
その上で、丁寧な手紙とともに嗜好品などの贈り物を送るのがいいそうだ。パソコンやスマホで顔を見せて近況を報告する「オンライン帰省」を選ぶ家族も増えている。
「義父母は、夫や子供の顔が見たいだけ。わざわざメイクするのも面倒だし、嫁の私は登場しなくてもいいや」と考える妻は多いが、絶対に参加すべきだという。
「『おかげさまで元気にやっています。お体に気をつけてくださいね』とあいさつしたら、後は立ち去ってもかまわないので、必ず顔は見せましょう」(前出・マナーズ博子さん)
帰省の煩わしさに比べれば、贈り物を手配したり、オンライン帰省に参加することなど、どうってことはないはず。気楽な夏ライフのために新たな形の帰省をスタンダードにするには、今年がチャンスかもしれない。
※女性セブン2020年8月13日号
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