新型コロナウイルスの感染防止と社会・経済活動の両立には、検査の拡充は重要な要素といえます。では、感染歴の有無を調べる「抗体検査」で「安全」は確認できるのでしょうか。
これに対し、抗体検査は、血液中の抗体の有無を調べます。抗体は、ウイルスなどの外敵を排除しようとする免疫の働きで作られます。無症状でも過去の感染がわかることから、厚生労働省は、感染の状況をつかむため、約8000人を対象に抗体検査を実施しました。
感染の広がりの調査には有効ですが、現在の感染状態を判断する目的には適していません。国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長は「感染直後で体内にまだ抗体ができていない場合や、抗体が少なく検出されない場合も陰性になることがあります」と指摘します。
しかし、専門家は「抗体検査を安全証明に使えるという誤解が広がっている」と懸念しています。抗体検査は採血するだけで手軽なことから「健康診断の一環に」などと検査を受け付ける医療機関が増えています。演劇やコンサートなどイベント開催にあたり、抗体検査の実施を安心材料として広報する主催者もみられます。7月に判明した東京都新宿区の劇場の集団感染では、出演者の1人が体調不良を訴えていましたが、抗体検査で陰性だったとして出演していたことが分かりました。
逆に抗体があったとしても、コロナに「二度とかからない」ともいえません。海外では一時、抗体検査の陽性者に「免疫証明書」を発行して外出制限を解こうとする動きがありましたが、世界保健機関(WHO)は根拠がないとして、発行を控えるよう求めています。
検査の精度にも注意が必要です。日本感染症学会の調査では、検査キットや試薬のメーカーによって精度にばらつきがあることがわかりました。研究が進めば、より効果的な使い方ができるようになるかもしれませんが、現時点で個人で受けるメリットは薄いと言えます。
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