2020年8月4日火曜日

          8月4日 よみうり寸評


 真夏日は本来気象用語ではない。最高気温30度以上の日という気象庁の定義づけが〈不快感を伴う言葉にしてしまった〉と嘆いたのは、文芸評論家の山本健吉である◆自著『ことばの歳時記』で比すべき歌を挙げている。〈真夏日のひかり澄み果てし浅茅原にそよぎの音のきこえけるかも〉(斎藤茂吉)。確かに同じ言葉が野草のそよぐ音しかしない寂寥せきりょうをまとって心に染みる◆炎天下の被災地も寂寥の念を帯びているのだろう。九州を中心とした豪雨災害からきょうで1か月を迎えた◆濁流にのまれ、土砂に埋もれて亡くなった方々の遺影が本紙朝刊に載っている。「寂しい」「笑顔を忘れない」「もっと話がしたかった」…家族や友人、隣人を失った人たちが寄せた言葉が切ない。備えても備えても、想定を超えていく自然の猛威が改めて迫ってくる◆避難生活においても自然は過酷である。ウイルス禍に加えて熱暑がつづく。真夏日どころか、猛暑日の地域もあろう。辛苦を乗り越え、暮らしに光差す日の訪れを切に願う。

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