2020年8月4日火曜日

球磨川の氾濫で母の川口豊美さんと伯母の牛嶋満子さんが犠牲になった現場を訪れる平野みきさん(手前)=熊本県球磨村で2020年8月4日午前11時56分、津村豊和撮影© 毎日新聞 提供 球磨川の氾濫で母の川口豊美さんと伯母の牛嶋満子さんが犠牲になった現場を訪れる平野みきさん(手前)=熊本県球磨村で2020年8月4日午前11時56分、津村豊和撮影  熊本県南部を中心に甚大な被害をもたらした九州豪雨は、災害発生から4日で1カ月を迎えた。九州では76人が死亡、3人が行方不明になっており、熊本県では今も1411人が避難所生活を余儀なくされている。災害ボランティアが県内在住者に限定されるなど、新型コロナウイルスが被災者の生活再建に影を落としている。
 球磨川の氾濫や土砂崩れで65人が亡くなった熊本県の被災地ではこの日、遺族や住民らが故人の冥福を祈った。
JR肥薩線球泉洞(きゅうせんどう)駅(熊本県球磨村一勝地(いっしょうち))前の川口商店跡では、亡くなった川口豊美さん(当時73歳)と姉の牛嶋満子さん(同78歳)の親族らが線香を供え、静かに手を合わせた。2人は約50年前から続く自宅兼店舗を引き継ぎ、切り盛りしてきた。アユ釣り客らの民宿などとしても多くの人に親しまれたが、球磨川の濁流に基礎ごと流された。流木や土砂が撤去され更地となった店の跡で川口さんの長女、平野みきさん(49)は「母もここまで水が来て店が流されるとは思っていなかっただろう。豪雨のあの日に戻れたなら、助けに行けるのに」と川を見つめた。
 熊本県芦北町箙瀬(えびらせ)地区の自宅で妻レイ子さん(同78歳)を失った山本守さん(75)は、避難先の町内の寺で、仏前に手を合わせた。「1カ月はあっという間だった。時間がたつにつれ、1人になったことを実感している」と語った。
 一連の豪雨では、7月4日に熊本、鹿児島、6日に福岡、佐賀、長崎の各県で大雨特別警報が出された。大雨はその後も断続的に続き、各地で河川の氾濫や土砂災害が相次いだ。熊本県では、全半壊や浸水など9000棟超が被災。県は応急仮設住宅425戸の建設に着手し、33戸で入居が始まっている。
 交通網にも大きな爪痕が残り、JR肥薩線は橋の流失などで八代―吉松間で、くま川鉄道(熊本県人吉市)は保有する全5両が浸水し全線で不通が続く。八代―水俣間が不通の肥薩おれんじ鉄道(熊本県八代市)は全線の運行再開に3カ月を見込む。熊本県など3県で道路の損壊などは3000カ所超に上った。
 九州豪雨は、新型コロナウイルスの感染拡大後初の大規模災害にもなった。熊本の災害ボランティアは県内在住者に限定され、泥などの片付けに追われる被災者からは人手不足を指摘する声も出ている。
 日本上空での梅雨前線の停滞は長期化し、警察庁によると、愛媛県や静岡県などでも犠牲者が出て全国の死者は7月中旬までに計82人に上った。【城島勇人、浅野孝仁、下原知広】

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