2020年8月4日火曜日

「安倍おろし」は側近議員から(時事通信フォト)© NEWSポストセブン 提供 「安倍おろし」は側近議員から(時事通信フォト) 〈一国の政治は、国民を映し出す鏡にすぎない〉とは、英国の作家サミュエル・スマイルズの『自助論』の一節だ。
政治には国民の質が如実に反映され、無知な国民は腐敗した政治しか持ち得ない。立派な政治は国民が目覚めることでしか生まれない。スマイルズは、「天は自らを助くる者を助く」と説いた。
しかし、権力は往々にして国民を無知の状態に置こうとする。安倍政権の8年間、数々の不祥事で説明責任を果たさず、記録を改竄させ、臭い物にフタをした。時の権力が強大で、野党に民意の受け皿になり得る信頼がない時、選挙で健全な民主主義は機能しない。
 そうした状況では、「落選運動」が国民にとって唯一の武器と言える。選挙の投票行動は候補者の政党、公約で判断されることが多いのに対し、「落選運動」は現職議員の発言や行動を検証し、「国民のためにならない」と評価された政治家を落選させるように呼びかける運動だ。憲法学者の上脇博之・神戸学院大学法科大学院教授が語る。
「特定の候補を当選させる目的の選挙活動は公職選挙法で様々な制約があるが、落選運動は公選法の対象ではない。だから選挙期間外でも運動できるし、年齢制限もなく、選挙権がない18歳未満でも参加できる。ネット選挙の規制にもかからないため、SNSやメールで運動できます」
 使い方によっては、安倍首相を退陣に追い込む装置にもなる。
 たとえば「危機対応を誤った大臣」など、安倍首相がお友達人事で起用した無能な大臣、副大臣などを片っ端から落選運動のターゲットにすることで首相の任命責任を厳しく問い、政権が維持できないように追い込むのだ。

国民の難局を政治利用

まずは何と言っても今回のコロナ対応で失敗した首相側近の大臣たちだ。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が真っ先に名前をあげるのは、「アベノマスク」担当の加藤勝信・厚労相とGo To キャンペーンなど経済対策担当の西村康稔・経済再生相だ。いずれも首相に重用され、次の総理・総裁候補とさえ目されている。
「加藤さんはPCR検査を受けられずに重症化したり、死亡者が出たことに批判が高まると、37.5度以上が4日間という厚労省が決めた検査基準を『国民の誤解』と責任転嫁した。自分の失敗を他人のせいにしたり、組織防衛と自己正当化のために理屈をこねて結果責任を負わない政治家には大臣どころか国会議員の資格もない」(藤本氏)
 コロナ対応の担当大臣として知名度急上昇中の西村氏も失格という。
「感染が拡大しているときに、『Go Toキャンペーンを広めましょう』などと言った人を大臣にしておきたくないでしょう。西村さんは専門家会議を廃止して自分の肝煎りで経済再生のコロナ対策会議をつくったかと思うと、政府の今後のコロナ対策『骨太の方針』をまとめるために私的諮問機関をつくるなど、総裁選出馬をにらんでコロナ危機を自分のブレーン集めに利用して政策を混乱させている。国民の難局を政治利用する政治家は落選させるべきです」
 他にもGo Toキャンペーンの方針転換で国民に混乱を招いた赤羽一嘉・国土交通相、経産省の持続化給付金の“中抜き”問題で責任を取らない梶山弘志・経産相をはじめ、落選運動の対象には重要閣僚がズラリと並ぶ。
 他にも表には菅義偉官房長官と高市早苗総務大臣の名前も挙げておいた。
※週刊ポスト2020年8月14・21日号

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