韓国最高裁が新日鉄住金(現日本製鉄)に賠償を命じた元徴用工訴訟で、原告側が差し押さえた同社資産を現金化する司法手続きが4日、進展したことを受け、日本政府は対抗措置の検討を本格化させた。外務省幹部は「資産現金化は日韓関係を決定的に終わらせる事態になる」と韓国側を強くけん制。政府内ではビザ(査証)の発給制限や大使召還が検討されている。
元徴用工問題について、日本政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場。韓国側に「国際法違反状態の是正」を繰り返し要求している。だが、文在寅政権は「司法判断を尊重する」との立場を崩しておらず、日本側が納得できる解決策は見込めない状況だ。
現在、政府内で検討の俎上(そじょう)に上がっている主な対抗措置は、韓国人へのビザ発給制限と駐韓日本大使の召還だ。ただ、ビザの制限は、新型コロナウイルス感染対策で韓国からの入国が事実上止まっている現状から、効果は薄いとみられている。大使召還も「政治的な意味はあるが、事態を打開する力は乏しい」(政府関係者)との指摘がある。
韓国に対しては、島根県の竹島(韓国名・独島)の領有権をめぐり2012年8月、国際司法裁判所(ICJ)への提訴を提案した経緯がある。だが、提訴に必要な韓国側の同意は得られず、不発に終わった。
このため、韓国経済に打撃となる報復関税や韓国側の日本国内資産の差し押さえも選択肢として浮上してきた。政府はこうした強硬措置も視野に韓国側の善処を促したい考え。ただ、安全保障上の問題を理由に昨年7月に打ち出した対韓輸出管理の強化は、韓国側の激しい反発を招いた。厳しい対抗措置に踏み切っても問題解決に寄与せず、日韓関係悪化に拍車を掛ける恐れもはらむ。
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